1997年(第5回)受賞者
氏名 | リチャード ドーキンス Richard Dawkins |
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生年月日 | 1941年3月26日 |
国 籍 | イギリス |
所属・役職 | オックスフォード大学教授 |
授賞理由
リチャード・ドーキンス博士は、1976年の著書「利己的な遺伝子 (The Selfish Gene)」によって、われわれの人間観に大きなインパクトを与えたことで、すでに広く世界に知られている。
しかし、「利己的な遺伝子」という言葉は、ドーキンス博士本人も言っているとおり、キャッチフレーズにすぎない。「延長された表現型」、「ブラインド・ウ ォッチメーカー」、「遺伝子の川」とつづく著書の中でドーキンス博士がわれわれに示そうとしているのは、この地球上のすべての生き物が、遺伝的なものの絶えざる競争によって出現し、存在し、そして進化してきたということである。
これは、「自然界の調和」というものの上に立ってこの世界を見てきたわれわれの認識や感覚を180度転換させるまったく新しい視点である。
われわれが自然と人間との共生というとき、その自然なるものには調和があると、われわれは暗黙のうちに思ってきた。そして、その調和を乱すことなく、われわれ人間が自然と共生する道を探そうと、われわれは努力している。
しかし、その自然が絶えざる競争の世界であり、それ故にこそ進化も起こったとするドーキンス博士の視点は、われわれのものの見方に根本的な転換を迫るものである。自然をどのようなものと見、認識するかによって、われわれのとるべき道は異なってくる。
もちろん、ドーキンス博士の主張は、近年の生物学が明らかにしてきた数多くの事実の上に立つものであるとはいえ、ひとつの大胆な仮説である。
しかし、自然と人間との共生に基礎を置きながら、次の時代を切り開く新しい価値観の創造に貢献することを目指しているコスモス国際賞にとって、ドーキンス博士の提示した視点は、極めて大きな意味を持つということができる。
コスモス国際賞も5回目を迎えた今、われわれにはこのような根源的な問いかけが求められているのではあるまいか。そのような意味で、リチャード・ドーキンス博士は、本年のコスモス国際賞にもっとも相応しい人だと考えるに至った。
略歴
1959~1962年 | オックスフォード大学バリオル・カレッジ |
1962~1966年 | オックスフォード大学研究生(1966年に博士号取得) |
1965~1967年 | 研究助手(教官:ニコ・ティンバーゲン教授) |
1967~1969年 | カリフォルニア大学バークレー校助教授(動物学) |
1969~1970年 | オックスフォード大学動物学部上級研究員 |
1970~1990年 | オックスフォード大学講師(動物学)およびニュー・カレッジ特別研究員 |
1989年 | 理学博士号取得(オックスフォード大学) |
1990~1995年 | オックスフォード大学、動物学アド・ホウミナン講師 |
1995年~ | オックスフォード大学チャールズ・シモニー教授職 ニュー・カレッジのプロフェッシヨナル・フェロー |
賞歴
1987年 | 英国王立文学会賞『ブラインド・ウォッチメイカー』 |
1987年 | ロサンゼルス・タイムズ文学賞『ブラインド・ウォッチメイカー』 |
1987年 | BBCホライズン・プログラム、科学プログラム年間ベストテレビ・ドキュメンタリーに対する科学技術賞『ブラインド・ウォッチメイカー』 |
1988年 | ロンドン、リージェント・カレッジから名誉フェローシップ |
1989年 | ロンドン動物学会から銀賞 |
1990年 | ロンドン学士院、マイケル・ファラデイ賞 |
1994年 | 人間科学分野の業績に対する中山賞 |
1995年 | セント・アンドリュース大学、名誉文学博士 |
1996年 | オーストラリア国立大学キャンベラ校、名誉文学博士 |
1997年 | 英国王立文学会のフェローに選ばれる |
主な著作
1976年 | 『利己的な遺伝子』 オックスフォードおよびニューヨーク:オックスフォード大学出版局。第2版は増補され、1989年に出版された |
1982年 | 『延長された表現型』 オックスフォードおよびサンフランシスコ:W.H.フリーマン |
1986年 | 『ブラインド・ウォッチメイカー』 ロングマン、ハーローおよびW.W.ノートン、ニューヨーク |
1995年 | 『遺伝子の川:生命に関するダーウィンの見方』 ニューヨーク:ベーシック・ブックス;ロンドン:ウイデンフェルド |
1996年 | 『あるはずのない山を登る(仮訳)』 ロンドン:バイキング・ペンギン;ニューヨーク:W.W.ノートン |
ドーキンス博士の最新刊『あるはずのない山を登る』(仮訳)の最終章でも述べられているが、
博士はイチジクとイチジクコバチの木の複雑な共進化の世界に魅せられた。
写真は、1992年にモーリシャス島で、博士がイチジクに木に登って観察しているところ
オックスフォード大学での昔からの遊び。チャーウェル川でのボート乗り
1991年、ドーキンス博士はロンドンで行われた恒例の王立協会主催の子どものためのクリスマス講演に招かれた。
このようすはBBCで放映された。博士は翌年、この講演を東京と仙台でも行い、写真は、仙台の講堂で聴衆が集まる前に、
コンピューターでのデモンストレーションの準備をしているところ
スコットランドのセント・アンドリュース大学にて、名誉文学博士号を受ける(1995年)