2000年(第8回)受賞者
氏名 | デービッド アッテンボロー Sir David Attenborough |
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生年月日 | 1926年5月8日 |
国 籍 | 英国 |
所属・役職 | 映像プロデューサー、 自然誌学者、動物学者 |
授賞理由
アッテンボロー氏の代表作として、"Zoo Quest"(動物をもとめて)がある。これは、アフリカ、東南アジア、南米、オーストラリアなど世界各地で、野生動物の生の姿を収録したもので、1984年から10年間にわたって、BBCから全ヨーロッパに放映された。
1979年には、地球上の生命の進化をテーマにしたシリーズ"Life on Earth"(地球の生きものたち)を発表したのをはじめ、生態学の視点から自然界を見た1984年の"The Living Planet"(生きものたちの地球)、野生動物の生存競争を描いた1990年の"The Trials of Life"(生きものの挑戦)、さまざまな環境のなかで植物が懸命に生きている姿を捉えた1995年の"The Private Life of Plants"(植物の私生活)などを次々に制作、これらの作品は全世界で放映され、高い評価を受けた。
20世紀の科学は、分析的、要素還元的な研究手法を通じて飛躍的な展開を遂げ、生命科学の分野でも、分子レベルの研究で未曾有の進展を見せてきた。しかし、その反面、解析の対象とする生物の生きているありのままの姿を見失う側面があるのも否定できない。アッテンボロー氏は、映像を通し、生物の懸命に生きる姿を克明に描き、生きものが演ずる現象を統合的に把握するという視点を強力にアピールした。生きる姿の総体を見ることを通じて、生物学の原点を示したこの成果は、今日の科学のあり方に鋭い提言を行うものであった。
アッテンボロー氏の作品は、単に、珍しい生きものや変わった生態を美しい映像でとらえているに止まらず、生物の進化と多様な生態、生存競争と生物間の相互依存など、真正面から地球生命の本質に迫る明確な視点をもつことに特長がある。
氏の全作品を通して、生命に対する深い畏敬と、生命とは何か?という強い探求心で貫かれていることが映像を見る者に強く訴えかける。このことが、同氏の作品が世界中の人たちに強い感動を与え、自然のなかで人はどのように生きるべきかを考えるヒントをもたらしていると考える。このことから、アッテンボロー氏は、研究者としても英国で高い評価を受けており、1983年に英国王立協会会員に選ばれ、1985年にはサーの称号を受けている。
アッテンボロー氏の業績は、地球的な視野に立って「自然と人間との共生」の理念に寄与する業績を顕彰せんとするコスモス国際賞の受賞者として極めてふさわしいと評価した。
略歴
1947年 | ケンブリッジ大学クレア・カレッジ卒 |
1947年 | 英国海軍にて兵役に就く |
1949年 | 教育関係出版会社にて編集業務に携わる |
1952年 | 英国放送協会(BBC)入社 |
1964年 | BBCを退社、人類学の研究のため大学院へ |
1965~1968年 | BBCにもどり、BBC2ネットワーク代表 |
1969~1972年 | BBCテレビ編成局長 |
1972年~ | BBCを退社 以後フリーランスのプロデューサーとして活躍 |
関連団体等
1979~1986年 | 世界自然保護基金世界委員会理事 |
1981年~ | 大英博物館理事 |
1983年 | 英国王立協会会員 |
1984~1987年 | 王立キュー植物園理事 |
1984~1990年 | 世界自然保護基金英国委員会理事 |
1990~1991年 | 英国学術協会会長 |
1991~1996年 | 王立自然保護協会会長 |
賞歴
1966年 | ロンドン動物学会シルバーメダル |
1981年 | UNESCO カリンガ賞 |
1983年 | 王立協会会員 |
1984年 | ケンブリッジ大学名誉博士 |
1985年 | 王立地理学会ゴールドメダル |
1985年 | テレビ芸術科学アカデミー エミー賞 |
1985年 | ナイト爵 |
1988年 | オックスフォード大学名誉博士 |
1991年 | 王立テレビ協会ゴールドメダル |
1996年 | 英国名誉爵位 |
1998年 | ロンドン動物学会名誉会員 |
1999年 | リンネ学会名誉会員 |
映像・著作
<映像>
1954~64年 | 「動物をもとめて」 |
1973年 | 「アッテンボローと東方へ」 |
1976年 | 「部族の眼」 |
1977年 | 「野生の世界」 |
1979年 | 「地球の生きものたち」 |
1984年 | 「生きものたちの地球」 |
1987年 | 「最初の楽園」 |
1989年 | 「失われた世界、消えたいのち」 |
1990年 | 「生命の挑戦」 |
1993年 | 「極寒のなかのいのち」 |
1995年 | 「植物の私生活」 |
1998年 | 「鳥の世界」 |
<著作>
1956年 | 「動物をもとめて-ギアナ」 |
1957年 | 「動物をもとめて-ドラゴン」 |
1959年 | 「動物をもとめて-パラグアイ」 |
1960年 | 「パラダイスをもとめて」 |
1961年 | 「動物をもとめて-マダガスカル」 |
1963年 | 「カプリコーンの下で」 |
1976年 | 「部族の眼」 |
1979年 | 「地球の生きものたち」 |
1984年 | 「生きものたちの地球」 |
1987年 | 「最初の楽園」 |
1990年 | 「生命の挑戦」 |
1994年 | 「植物の私生活」 |
1998年 | 「鳥の私生活」 |
マレーグマの赤ん坊に授乳。マレーシア、バメオにて (1956年)
マウンテンゴリラと。ルワンダにて (1978年)
王様ペンギンの親、ひなと。南ジョージアにて (1992年)
「鳥たちの世界」の制作で、オーストリアの調査チームが使用していたクレーンに吊り下げたゴンドラから、
南アメリカの熱帯雨林を観察。ベネズエラにて (1998年)