2004年(第12回)受賞者
氏名 | フーリャ・カラビアス・リジョ Julia Carabias Lillo |
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生 年 | 1954年 |
国 籍 | メキシコ合衆国 |
所属・役職 | メキシコ国立自治大学理学部教授 |
授賞理由
フーリャ・カラビアス・リジョ教授は、1954年にメキシコシティで生まれた。メキシコ国立自治大学で生物学を学び、母校で環境科学分野の教鞭をとる一方、熱帯雨林の再生、資源の管理、環境の保全などに関する研究を続けたが、その間、「常に、途上国の視点から物事を見、将来を考える」という姿勢がカラビアス教授の学問研究の基本的な立場となった。
この考え方を実践の場に生かすため、1980年代から、途上国の貧困層を対象とした開発と天然資源の保全という困難な問題に積極的に取り組んだ。
1982年、環境破壊が激しく、メキシコで最も貧しいといわれているガレロ州の知事からの要請で、自然資源を枯渇させることなく、住民の生活を向上させる具体的な研究プログラムの作成と実施を担当。経済学者、生態学者らとチームを組み、さまざまな学問分野の研究を統合する手法で、4年間のプログラムを実施し、大きな成果を挙げた。
この成果に注目したメキシコ大統領の要請で、さらに国内4州で6年間、開発と天然資源の保全を両立させる計画に取り組み、それぞれすぐれた成果を挙げた。
カラビアス教授が組み上げたプログラムは、世界の途上国で自然の環境を守りながら、貧困の救済に役立つ普遍性を持つものとして、国際的に評価されている。
これらの業績によって、カラビアス教授はメキシコ政府に招かれ、1994年から2000年まで6年間、環境・自然資源・漁業の担当大臣を務めた。
そのほか、1992年のリオの地球サミットでは、報告書「地球のために」の起草委員会の主要メンバーとして指導的な役割を果たし、国連環境計画(UNEP)など、数多くの国際的環境組織で、途上国の立場から、環境と開発の両立、地域住民の利益の増進など、困難な課題の解決に積極的に発言し、行動してきた。
2000年に大臣の職を辞した後は、国立生態学研究所の所長と、国立自治大学の教授に復帰しメキシコの環境と自然保護分野での第一人者として活動を続けている。
常に途上国の立場から全地球的な環境問題を考え、徹底したフィールドワークと統合的な手法で困難な課題に取り組んできたカラビアス教授は、学問研究とその実践両面から、地球の未来へ向かって、自然と人間との共生の道を切り開いてきたパイオニアのひとりであり、同教授の活動は、コスモス国際賞の授賞に極めてふさわしいと評価した。
略歴
1977年 | メキシコ国立自治大学理学部卒 |
1981年 | メキシコ国立自治大学理学部 大学院・理学研究科修了 |
1984年 - 1994年 | メキシコ国立自治大学理学部講師、助教授、教授 |
1994年 | 国立生態系研究所長 |
1994年 - 2000年 | メキシコ環境・天然資源・漁業省大臣 |
2001年 - | メキシコ国立自治大学理学部教授 |
2004年 | メキシコ、チアパス州ラカンドン地域に生物多様性研修センター設立 |
賞歴
2001年 | Getty Prize (世界自然保護基金 [WWF] ) |
著作
1985年 | Ecologia y Autosuficiencia Alimentaria (生態系と食物自給) |
1989年 | La Puduccion Rural en Mexico: Alternativas Ecologicas (メキシコにおける農村生産:環境に優しい農業とは) |
1992年 | For Earth's Sake |
1994年 | Manejo de recursos naturals y pobreza rural (自然資源と農村における貧困について) |