2008年(第16回)受賞者
氏名 | ファン・グェン・ホン Phan Nguyen Hong |
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生年月日 | 1935年7月19日(73歳) |
国 籍 | ベトナム |
所属・役職 | ハノイ教育大学名誉教授 http://www.hnue.edu.vn/ |
授賞理由
ファン・グェン・ホン博士は、ベトナムにおけるマングローブ林の再生と保全に関する研究と活動の先駆者であり、世界的にも、熱帯のマングローブの分類学、生態学の分野で多くの成果を挙げている研究者である。
ベトナムは、長らく戦乱が続き、国土が荒廃した。特に米軍による枯葉剤の散布による生態系の被害が著しく、国のマングローブ林の約40%にあたる1,240k㎡が被害を受けた。マングローブは、世界の熱帯、亜熱帯の約110カ国の海岸に分布し、総面積は16万k㎡におよぶもので、単一の種を指すのではなく、潮間帯に分布する100以上の種の植物の総称である。「海の森」とも言われ、多くの生物を養い、独特の生態系を作り上げているばかりでなく、木材や漁業等への利用、海岸の浸食や津波に対する自然の防波堤効果なども有している。インドシナ半島沿岸に住むベトナムの人々の暮らしは、このマングローブ林の恵みとともにあった。
ファン博士は、1964年から40年間以上に亘りマングローブの分類学、生態学の研究者として調査研究を行い、破壊されたマングローブ林を再生する活動の中心として貢献してきた。その方法は、そこに住む人々とともに目標・計画を立て、住民や子どもたちの参加によって保全を実行し、生活を保障するという地元との強い絆のもとで行うものである。特に、カンザー地区はベトナム戦争で400k㎡のマングローブ林が完全に消滅した地域であるが、ファン博士は、枯葉剤による土壌汚染やマングローブ植物の遺伝子調査など、科学的見地を基に活動を行った。現在220k㎡におよぶマングローブ林が復元され、一度は姿を消したサルやカワウソ、大型のツルなどが戻ってきており、類のない森林の生態系復元として世界から高く評価されている。これによりカンザーのマングローブ林は、2000年にユネスコの生物圏保護区に指定された。
マングローブ林は、海と陸をつなぐ場であり、人間の活動も包含する生態系である。マングローブ林の再生は、生態学的かつ社会経済的にも重要であり、ファン博士の研究活動は、広く普遍性を持つものである。生物多様性の保護や温暖化防止が謳われている今日において、早くからその重要性を指し示し、研究活動を行ったファン博士の功績は極めて大きくコスモス国際賞の授賞にふさわしいと評価した。
学歴
1956年 | ハノイ教育大学 理学士号 |
1964年 | ハノイ教育大学 理学修士号取得 |
1970年 | ハノイ教育大学 博士号取得 |
職歴
1980-1991年 | ハノイ教育大学助教授 |
1991-2007年 | ハノイ教育大学教授 |
2008年- | ハノイ教育大学名誉教授 |
1987-1994年 | ハノイ教育大学 マングローブ生態系研究所所長 |
1995-2002年 | ハノイ大学 自然資源管理・環境研究センター副所長 |
2003-2007年 | ハノイ教育大学 マングローブ生態系研究所長 |
賞歴
1997年 | ベトナム大統領「人民教師称号」 |
2000年 | ベトナム大統領「労働勲章(1等)」 |
2005年 | ベトナム天然資源大臣「環境賞」 |
賞歴
1997年 | ベトナム大統領「人民教師称号」 |
2000年 | ベトナム大統領「労働勲章(1等)」 |
2005年 | ベトナム天然資源大臣「環境賞」 |
著作(邦訳本なし:仮訳)
1993年 | 「ベトナムのマングローブ」 |
2000年 | 「ホーチミン市、カンザー地区におけるマングローブ林の生態系調査」 |
2002年 | 「レッドリバー河口域のマングローブ生態系―生物多様性、生態系、社会経済性、管理と教育」 |
2006年 | 「自然災害の緩和や沿岸地域の環境改善におけるマングローブと珊瑚礁の役割」 |