平成18年度助成事業 成果概要の報告
団体名(所在地) | 特定非営利活動法人 国際マングローブ生態系協会〔沖縄県〕 |
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事業名 | 西表島のサンゴの保全・再生に関する調査 |
事業の実施場所 | 西表島(上原地区および網取地区) |
事業の実施期間 | 平成18年4月~平成19年3月 |
事業の概要 | 西表島のサンゴ群集は健全に見えるが、赤土の流入や生活排水による富栄養化等でサンゴの生育環境は悪化している。海水の富栄養化や乱獲による藻食性魚類の減少による海藻の繁茂が、サンゴ群集の成立に及ぼす影響について調べるため、本事業を実施した。 |
成果の要約 | 西表島の中でも住民が多く開発が進み、栄養塩流入が多い上原地区と、上原地区と対照的に道路がなく、居住者もいない網取地区の2カ所を調査地とした。2006年6月に両地点で小さく分割したサンゴ郡体片の移植を行い、半数のサンゴ郡体片に藻食性魚類排除ケージを設置した。 波浪の影響が比較的小さく安全にスキューバダイビングが可能であった7月から11月までは、毎月定期的にダイビングによる調査を行った。測定項目は、移植サンゴの大きさ(生存と成長の評価)、出現した海藻の現存量、藻食性魚類の摂餌状況調査とした。 調査の結果、藻食性魚類の摂餌圧が低いと海藻が多くなり、しかも海藻が繁茂すると移植したサンゴの生存率が低下し、生存サンゴ小片の成長が抑制されることが明らかになった。しかし、陸上からの栄養塩の流入量が多いと考えられた上原地区よりも、栄養塩供給の少ない網取地区の方が、海藻の現存量が有意に多かった。このことから、上原地区での生活排水等による栄養塩の海への流入は、藻類の繁茂を促進するほど多量に流入していないことが示唆された。また、網取地区では、上原地区よりも藻食性魚類よる藻類の摂餌圧が有意に低かった。西表島でも、近年、サンゴ群落の減少は著しいが、(1)生活排水等による栄養塩の海への流入は、局所的であり、広い範囲にわたって深刻な海藻繁茂を引き起こすほどではないこと、(2)藻食性魚類は減少しているが、上原地区でも藻食性魚類が比較的たくさん残っており、それらの藻類摂餌による藻類繁茂の抑制効果が、栄養塩流入による藻類の促進効果を上回っているものと推察した。 以上のことから、サンゴ群集を回復させるためには、藻食性魚類が重要な役割を果たしていることが再認識された。また、現在は、上原地区では海水の栄養塩濃度は深刻な海藻の繁茂を引き起こすレベルには達していないが、年々観光入域客数が増加していることから、生活排水等による海への栄養塩の流入が増加しており、西表島のサンゴ礁の将来を決して楽観視できるものではないことを痛切に感じた。 関連成果物 日本サンゴ礁学界第9回大会、日本生態学会第54回大会等で成果を発表した。また、成果は、学術国際誌への投稿準備に取りかかっている。
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