現地調査 2007年4月からの継続調査として、三川(木津川・宇治川・桂川)合流以下の淀川水系の河川、水路、水田、ため池に生育する水生植物(すべての沈水性・浮葉性水草、一部の抽水・浮遊性水草)、湿生植物(絶滅危惧種および特定外来生物)の分布を調査した。加えて、近年淀川下流部で大繁殖し、問題になっているボタンウキクサについて、生活史を明らかにするために定期的に調査を行った。また、関連する研修や行事も2回実施した。 現地踏査の結果、99種(抽水植物45種、浮葉植物9種、沈水植物26種、浮遊植物19種)の水生植物を確認することができた。また、分布データが蓄積したことにより、淀川水系に生育する水生植物の分布パターンが明らかになった。大まかにではあるが、本流、支流、ため池と淀川水系に広く分布するタイプ、特定の地域に分布しているタイプ、本流に偏って分布しているタイプ、水田や河川の上流域、山手のため池など、特定の環境に分布しているタイプなどを認識することができた。本流分布型の中には、琵琶湖・淀川の固有変種でもある、ネジレモなども含まれ、淀川の植物が、上流にある琵琶湖の影響を大きく受けていることが明らかになった。 ボタンウキクサについては、生活史特性の調査に加えて、越冬地の早春の駆除活動を行った。平成21年度は淀川本流での流下の確認が8月であり、例年に比べて遅れた。定量的な評価は難しいが、越冬地における早期駆除も一定の効果をあげたものと考えられる。
標本調査・整理 分布調査を実施するにあたり、調査対象となる水生・湿生植物の植物体を可能な限り採集して、標本を作製した。結果、613点の標本を収集することができた。これを、標本台紙にマントし、大阪市立自然史博物館(OSA)に納めた。また、大阪市立自然史博物館標本子において、過去に淀川水系で採集された水生・湿生植物の調査も進めた。
関連成果物(公表した論文、活動の写真等)
本事業の成果は最終的に2010年7月に大阪市立自然史博物館で開催される淀川に関する特別展に反映されるが、新しい知見は順次、学術雑誌等に報告している。2009年度は報文2報、学会発表2件、およびホームページを作成、公開した。 【論文・報告等】 1.志賀 隆,2010.プロジェクトY 淀川水系歩いて採って考えて(その4・植物班の巻) 淀川の水草の今を調べる.Nature Study 56(2):10-11. 2.志賀 隆,2010.ホナガカワヂシャ(ゴマノハグサ科)の越冬記録.Nature Study 56 【学会発表】 1.志賀 隆・大阪市立自然史博物館淀川水系調査グループ植物班,2010.淀川水系における水生植物の分布状況.関西自然保護機構2010年度大会,大阪.(ポスター発表) 2.志賀 隆・大阪市立自然史博物館淀川水系調査グループ植物班,2009.淀川水系における外来水生植物の分布状況.水草研究会全国集会第31回大会,山形.(口頭発表) 【ホームページ】 プロジェクトY 淀川水系調査グループ http://www.mus-nh.city.osaka.jp/project_yodogawa/
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