① 結実期の調査
- 稚樹調査
二次林内では稚樹相対散乱光(DSF)は5~15%であり、その光条件においては、稚樹は50~160cmに達していた。原生林内の稚樹相対散乱光は1~2%と暗いが、二次林同様の稚樹が生育していた。 - 結実調査
閉鎖された林内では、トウツバキは結実しておらず、ギャップの隙間に位置する個体、枝に結実が確認された。採種用にオープンな立地で栽培されている個体は豊富に結実していた。 - 聞き取り調査
2009年の干ばつの対応として、ため池から水を導入したり、井戸を新規に堀り、水不足に対応していた。節水対策として、株元へチューブを張り巡らし、水が無駄にならないように少しずつ潅水するシステムを導入していた。実生苗は例年より枯れた量が多かった。落下する新芽も例年より多かったが、接木は意外に活着がよいか、変化がみられなかった。
② 開花期調査
楚雄市の個人宅に栽培されているトウツバキは、根元で枝分かれしているものが多く、過去に一度伐採されたものと思われた。成育状況は、寺院等で保護されているものと同等以上であり、活力度には問題はなかった。92歳の老人から、基部直径約30cm、樹齢数百年の古樹について聞き取り調査を行ったところ、この老人が子どものころと比較して、基部直径、高さ、活力に変わりはないとのことで、極めて成育が緩慢であるが、状態は安定していることがうかがえた。
組織培養
別添写真のように、植物成長調節物質を含まない1/2MS 培地では成長が遅かった(A)。培地に1mg/L BA を添加したものでは新芽とカルスの形成がみられたがシュートの成長は遅かった(B)。5mg/L GA3を添加した培地では、成長がやや速く、カルス形成は中程度(C)、0.5mg/1BA 添加では/ 正常色のカルス形成が見られた(D)。
トウツバキの組織培養のようす(8ヵ月後の状態)
Fig. The tissue culture of Camellia reticulata after 8 months A.The Shoot grew very slowly without callus production at the bottom of the stem on 1/2 MS medium without plant growth regulators. B.The shoot grew slowly on 1/2 MS with 1 mg/L BA. A new leaf bud was appeared and callus was produced at the bottom of the stem. C.The shoot on 1/2 MS with 5 mg/L GA3 grew faster than other condition. D.The shoot on 1/2 MS with 0.5 mg/L BA grew slowly with callus production.
日本植物園協会誌44:189-196(2010年3月) 志内利明・兼本 正・山下寿之・神戸敏成・中田政司・内村悦三・王 仲朗・魯 元学・馮 宝鈞・李 景秀・王 霜・管 開雲 : 中国雲南省のトウツバキの保全に関する共同研究(平成19・20年度に受けた助成の成果を、平成21年度にまとめて発表したもの) 富山県中央植物園研究報告16:45-61(2010年3月) 志内利明・兼本正・李 景秀・王仲朗・王霜・馮 寶鈞・管開雲: 中国雲南省のトウツバキ古樹資料(平成20年度に受けた助成の成果を、平成21 年度にまとめて発表したもの) 富山県中央植物園研究報告16:1-8(2011年3月) 志内利明・山下寿之・王 仲朗・管 開雲 : 中国雲南省永平県宝台山に野生するトウツバキの花形の多様性(平成19年度に受けた助成の成果を、平成22 年度にまとめて発表したもの) 富山県中央植物園研究報告16:9-13(2011年3月) 長谷川幹夫・兼本 正・王 仲朗・管 開雲 : 中国雲南省中央部の常緑広葉樹二次林におけるトウツバキ稚幼樹の生育状態と光環境(平成22年度に受けた助成の成果を発表したもの) |