調査研究開発助成事業 成果概要の報告
団体名(所在地) | 信大自然史研究会〔長野県〕 |
---|---|
代表者 | 代表 大窪 久美子 |
事業名 | 本州中部の希少地形に成立する群落の保全生態学的研究 |
事業の実施場所 | 霧ケ峰、美ヶ原等、主に長野県の山岳地域(今年度は霧ケ峰) |
事業の実施期間 | 今回計画:平成26年4月~平成27年3月(助成対象期間) |
事業の概要 | 消滅や破壊が懸念されている霧ヶ峰等の本州中部における希少な構造土地形及び、その地形上に成立する特殊な群落を保全するため、これらの分布や特性、群落構造、立地条件、人為の影響を解明し、保全策の提言を行う。 |
成果の要約 | 霧ヶ峰高原の希少な地形を含む山頂部、山稜部の中から5地区を選定した結果、植生調査では全124種が確認された。調査地域の植生はススキクラスの標徴種を多く含み、ススキやニッコウザサが優占するイネ科植物を主要構成種とする草原であった。本州中部の二次草原に一般的なトダシバ―ススキ群集や霧ヶ峰高原で報告されたスズラン―ススキ群集の構成種と共通していた。 植生調査で得られたデータをTWINSPAN解析にかけた結果、234方形区は群落型1から群落型4の4つに分類された。特に希少な地形を含む特徴的な群落には、群落型1が認められた。群落型1はウスユキソウやイブキジャコウソウ、ヒメスゲ、ホソバヒカゲスゲなどの種群1に含まれる植物の常在度が大きく、種群2のトダシバの常在度と優占度が大きいことで特徴づけられる群落であった。一方、対照的群落タイプとして、群落型4ではヤマカモジグサやイワアカバナ、タチツボスミレなどの種群8に含まれる植物の常在度が大きく、種群7に含まれる植物の常在度と優占度が大きかった。これらの中間的なタイプとして群落型2と3が認められた。また、群落型1は山稜頂部付近に成立し、その組成からニッコウザサ―ヒゲノガリヤス群落に相当すると考えられた。群落型4は主に山稜頂部から離れた斜面下部や風背斜面に成立し、その組成からススキ群落や高茎広葉草本群落に相当し、やや湿生的な群落であると考えられた。 ロガーによる地温の測定結果から、希少な地形を含む山頂部や山稜部の群落型1においては、凍結融解作用が生ずる条件を有する日数が他群落型よりも有意に多かった。また、立地環境条件のデータと植生データをDCA解析にかけた結果からは、群落型の変化は山稜上の環境傾度に伴い連続的に生じており、主に山稜の風衝地形と対応したものであることがわかった。つまり、霧ヶ峰高原の山稜部では高標高地ほど緩やかで乾燥した立地条件となる傾向があり、特に風衝の影響が強い山稜頂部では群落高が低く乾生的な群落が成立すると考えられる。その一方で、山稜頂部から離れるほどに風衝の影響は小さくなり、風衝斜面の下部や風背斜面では高茎広葉草本を主要構成種に含むより湿生的な群落が成立すると考えられた。
|