■多様な着生植物群集 芦生研究林の保存木の一つであるカツラの樹上には、木本28種、草本5種、シダ類6種の計39種の維管束植物が生育していることが明らかとなった。そのうちの6種は京都府レッドデータブック2015に含まれる希少な種であった。保存木のカツラ梢端から直接メジャーをおろして測定したところ樹高が37.8mであった。樹形を測量したところ、10m付近は周長の太い枝が横に張り出したり、複数の幹が重なったりして林冠土壌が溜まりやすくなっており、また20m以上からは枝の密度が高くなっていて、特にこうした位置に多様な着生植物が生育していた。
■樹上特有の環境条件 樹上に堆積する有機物層(林冠土壌)を調べた結果、分解者の群集組成は地上とは異なり、樹上においても植物体の養分の生成速度は維持されていることが明らかとなった。着生植物は水利用効率を高めるなどして、樹上の環境に順応して生育している様子がうかがえた。 芦生の森に長く生存してきた巨木に成立する着生植物群集の多様性について明らかにすることで、日常には知りえない自然界に存在する共生の一端を垣間見ることができた。本事業についてはNHK「まちけん参上!」、日本テレビ「所さんの目がテン」の番組において紹介された。また、第65回日本生態学会大会、The 8th EAFES International Congressにてポスター発表を予定している。本事業で得られた成果を目にした人たちが、そこにしか存在しえない貴重な自然に対する意識を感じ、巨木の保全意義について見つめ直すきっかけとなれば幸いである。
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