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花博自然環境助成事業

平成30年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) NPO法人おおいた環境保全フォーラム〔大分県〕
事業名 稀少種カワツルモを指標とし潟湖・龍神池の再生事業
事業の実施場所 大分県佐伯市米水津大字浦代浦 間越地区 龍神池
事業の実施期間 平成30年4月~平成31年3月
事業の概要 カワツルモを始めとする絶滅危惧種が数多く生息する潟湖・龍神池は、近年環境の悪化が進行し保全対策が急務となっている。H29年度は地形や水質・底質などの詳細な調査を実施し、湖の排水路の閉塞解消に向けた施策が必要であることが分かった。H30年度は環境調査の継続と環境再生事業を実施する。
成果の要約

3年計画の2年目となる本年度の事業では、1年目の調査で龍神池の水循環の滞りが判明したことを受け、水循環を改善するための池口の堆積土砂除去作業と作業前後の環境モニタリングを実施した。2010年に堰が建設され、堆積した土砂が二重に水循環を滞らせる要因となっていた。
今回の作業では、水流を回復させるため、堆積土砂が陸化していた部分を一部削り池口の幅を広げた。急激な環境変化を最小限にするため、作業は人力でおこなった。作業中、多少濁った水が流れ出たものの、作業後数時間で濁りはとれ、池や海岸部への影響は確認されなかった。作業前後のモニタリングは、龍神池の水位変化と赤外線カメラ搭載ドローンによる海水流入範囲の調査をおこなった。堆積土砂撤去後には、大潮の満潮時に海水が流入する範囲の拡大が確認できた。
水質調査や生物調査は大きな変化がなく、池の周辺環境の変化もない。その状況の中、2018年5月にカワツルモの大量繁茂を確認された。カワツルモ確認の直前に数日間にわたる長雨の影響で、龍神池の表層水はほぼ淡水の状態になっており、これがカワツルモの種子の発芽に何らかの影響を与えている可能性があり、今後も調査が必要である。
汽水環境である龍神池は、潮汐の変化による海水の流入出や雨水や地下水の流入による塩分濃度の変化が絶えず起きている。汽水環境に生息する生物はこの変化をうまく利用して生活しており、逆に塩分濃度変化や水循環が滞ると汽水生物は生息できなくなってしまう。
今後、可能な限り自然に近い状態で水循環を維持していくには、池口の堰撤去が課題となっている。堰の撤去で、池内部のヘドロの流出や、急激な水位の低下をまねく心配があったが、これまでの調査で、堰の手前に堆積した土砂の高さで水位が決まっており、堰の撤去が水位低下やヘドロ流出の要因となる可能性は低いことが予想されている。堰を撤去後には、堆積土砂の盛り上がりが天然の堰となり、自然な形で水循環が回復することを期待している。

堰の池側の水路整備(堆積土砂が陸化した場所に生えるヨシを刈る) 堰の海側水路の整備 コドラート法によるベントス調査 堆積土砂を除去して面積が拡大した干潟 浅瀬に流れ着きヨシにからむカワツルモ