3年計画の最終年となる本年度の事業では、1年目の調査において龍神池の水循環の滞りが判明し、2年目の事業で人力による池口の堆積土砂の除去を行い、滞っていた水循環環境が緩和された。 急激な環境変化を抑えるため、前年度は堆積土砂除去により循環環境を整え、本年度事業においては地域自治会、振興局の協力のもと、2010年に建設され水環境を滞らせる要因となっていた池口の堰の全撤去を実施した。重機による堰と周辺の岩の解体撤去工事後、河口部に堆積した土砂は人力で掘り下げを行った。海への排水口が広がり、緩やかな河川ができたことにより、かつての龍神池の姿を取り戻すことができた。心配されていた水位の低下やヘドロの流出はなく、大潮の満潮時には海水が流入する範囲が前年度よりさらに拡大され、龍神池内の水環境が好循環することが確認できた。 前年度大量繁茂が確認されたカワツルモは、本年度の大量繁茂は確認されなかった。前年度は5月の発芽時期の直前に数日間にわたる長雨により龍神池の表層水がほぼ淡水になったことが種子の発芽に影響を与えたと考えられ、本年度はその影響を与える要因が少なかったと思われる。しかしながら、確認頻度は少ないがカワツルモの生息は本年度も確認された。 汽水環境である龍神池は、潮汐の変化による海水の流入出や雨水や地下水の流入による塩分濃度の変化が絶えず起きている。汽水環境に生息する生物はこの変化をうまく利用して生活しており、逆に塩分濃度変化や水循環が滞ると汽水生物は生息できなくなってしまう。そのため本年度は汽水環境を利用しかつて大量に生息していたヤマトシジミを放流し、その生息数のモニタリング調査を実施した。 堰の撤去前までのヤマトシジミの生息数は減少傾向にあったが、撤去後の環境が生き残った個体が良い影響を与え産卵し、子孫を残していくことが期待される。この堰の撤去に伴い、龍神池の水環境が絶滅危惧種カワツルモをはじめ、池内に生息する生物相がどの様に変化、影響を与えるか今後も継続的調査が必要とされる。
|