2019年4~5月の開花期に中部・関東地域のシバザクラが植栽された園地7か所を調査したところ、5か所で共通する特徴的な生育障害(病害)が認められた。 発病場所はスポット状に生育および開花が抑制され、押しつぶされたような外観を呈した。 葉は付け根付近から黄化して枯上がり、生長点付近の寸づまり、茎の屈曲や肥大などの奇形症状が認められた。 3か所の園地の罹病サンプルをベルマン装置にセットして抽出を行ったところ、いずれのサンプルからも同様の形態的特徴を示す線虫が多数分離された。 本線虫を無菌化後、キャロットディスクに接種して培養を行った。 培養した線虫を健全なシバザクラ苗に接種後、人工気象室内で育成したところ、同じ病徴が再現された。また、罹病部から同じ形態的特徴を示す線虫が再分離された。培養した線虫からDNAを抽出し、rDNA ITS領域の塩基配列解析を行ったところ、植物寄生性線虫として知られるDitylenchus dipsaci(和名:ナミクキセンチュウ)と100%の相同性を示し、形態的特徴も一致したことから、シバザクラ茎線虫病と診断された。 シバザクラ茎線虫病の防除方法を検討するため、米糠を用いた太陽熱消毒の実証試験を実施した。本病が発生し病原線虫に汚染した花壇の土をワグネルポットに充填後、米糠を1㎡当たり1kgに相当する量を混和して潅水し、ビニールシートを被覆して3週間太陽光に当てた。ビニールシートを除去後、健全なシバザクラ苗を植えつけ、発病状況を継続調査した。結果が判明するまで来年度も調査を継続する予定である。 2か所の園地においてRhizoctonia solaniによる株腐病の発生が確認され、1か所の園地で菌類病による花腐れが確認された。また、土壌理化学性に起因すると考えられる生育不良が各園地で観察された。 調査結果をもとに「シバザクラの病害診断と対策マニュアル」を作成した。なお、研究成果の詳細は今後、日本植物病理学会等に発表する予定である。
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