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花博自然環境助成事業

令和2年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) 番所山を愛する会〔和歌山県〕
事業名 白浜町番所山に桔梗平を復活させよう
事業の実施場所 和歌山県西牟婁郡白浜町番所山
事業の実施期間 令和2年4月~令和2年10月
事業の概要 吉野熊野国立公園にある番所山は、江戸時代には松林があり、キキョウが咲いていたことから桔梗平とよばれていた。現在はフィールドミュージアム番所山として整備され、遷移の進んだ常緑広葉樹林もあるが、一部に裸地も残されている。その裸地に在来種(郷土種)を植栽して桔梗平を再現し、景観を保全する。
成果の要約

実施場所が吉野熊野国立公園内であるので、申請前の9月に環境省にこの事業実施にあたっての手続き、方法等の指導を受けた。この計画が、工作物を設置するのでは無いため、特に申請は必要無く、環境省吉野熊野国立公園管理事務所田辺管理官事務所に5月に事業内容の説明、6月に経過報告、9月に事業後の報告を電話とメールで写真を添付して行った。
5月に交付確定後、土地所有者の瀬戸部と、番所山公園の管理者の白浜町の許可を得た。
和歌山県からの指導により、新型コロナウイルス感染症を予防するため、ボーンティアを募集して作業することが出来なくなった。そこで、5月25日に新型コロナウィルス感染症予防に伴う予算計画の変更承諾書を得た。
5月末から6月にかけて、緑化の工法に関して複数の業者に相談し、年月が経つと腐る木製の柵を設置して木製の植木鉢を置く方法と、植栽基盤を整えて土壌改良を行う方法についてどちらが適しているか検討し、土壌改良を行う方法を選択した。
6月1日から5日にかけて、植栽基盤作成のためにミニユンボによる掘削と2tダンプ車による残土処理を2回行い、バーク堆肥などを混合した。5日間、延べ10人による作業であった。
助成決定後より、キキョウ、ハカマカズラ、トベラ、クレオメの苗を作成した。ハカマカズラはそのままでは発芽しないので、種子に傷をつけて発芽を促進させた。トベラは番所山で入手した種子を用いた。
5月上旬、苗について和歌山県農林水産部林業試験場に相談したところ、番所山公園の管理者である白浜町が苗の提供希望申請をしてくれることになり、ウバメガシの苗100本の提供をうけた。この苗は、和歌山県内の小学生が竹のポットに植えたウバメガシのドングリが成長したものや、カシノキバンクに寄せられたドングリから林業試験場で育てられたものであった。
土壌改良作業後、番所山を愛する会のメンバーによって、ウバメガシ苗100本、ヤマモモ苗3本、シャリンバイ苗10本、ハカマカズラ、キキョウ、ヤマハギ、クレオメの苗を植えた。
盛夏には、番所山公園内にある白浜町の水道から許可を得て灌水を行い、乾燥を防いだ。
7月頃からキキョウやクレオメが花をつけ始め、地元紙である紀伊民報が取材し、掲載してくれた。また、地元放送局のビーチステーションがこの取組を紹介してくれた。南方熊楠記念館のブログ、フェイスブックでも紹介した。また、地元の小学校、中学校、観光センター等へこの事業のPRのために紀伊民報の新聞コピー2枚と番所山の冊子を配布する。
駐車場からよく見える位置に花博協会の助成を受けたというシールを貼った看板を設置した。 
10月に中旬、植栽した苗より大きく茂った雑草は刈りとって、肥料になるように地面に置いた。宿根性のキキョウには液体肥料を与えて株を大きくして、種子をたくさん作らせた。クレオメは種子を採取して、来年度播種する予定である。
今後も雑草の刈り取りや施肥など適正な管理を行いつつ、植えた植物の成長を支えていきたい。
土壌改良作業の結果、今まで植物が生育出来なかった大きな礫が入った粘土質の裸地は、植栽可能な土壌に改良された。今後は、たとえ放置してもウバメガシを主とする常緑照葉樹林に遷移していくと考えられる。
植栽したウバメガシ、ヤマモモ、シャリンバイ、キキョウ、ハギなどはほとんど枯れずに根を張ったようである。今まで裸地であった場所が、意図したように緑化できたと言えるだろう。また、園芸植物ではあるが、南方熊楠が好んだゆかりのクレオメを明るい草地で咲かせたり、番所山にかつて多く見られたキキョウを復活させたりすることができ、それらについて地元の新聞やラジオ番組に話題提供できた。これらの広報によって地元の人々にも興味を持ってもらうことが出来たと考えている。炎天下で水やりの作業中に、かつてのキキョウ平が懐かしいと言われる年配の方から励ましのお言葉をいただいたり、散歩中の女性からクレオメの種子をわけて欲しいと頼まれたりした。
新型コロナウィルス感染対策のために修学旅行先が地元になった小学生や中学生の来館が増え、番所崎の由来や、植生の遷移について話をする機会も増えた。また、南方熊楠記念館が行っているウオーキングイベントの「番所山の森林探検」でも、番所山の極相林や松林からの遷移について紹介することができ、自然と人間の共生について考えてもらうよい機会になっている。

緑化直後 クレオメ開花 緑化後 ウバメガシ苗 ハカマカズラ苗 土壌改良作業6月