<実施経過> 「タンポポ調査」は市民参加型調査として、在来種と外来種の比率、雑種タンポポの解析、よく理解されていない種を含めた在来種の分布の把握などを狙い、2005年に近畿7府県、2010・2015年には調査地域を西日本19府県に広げて、勧めてきた。今回は、西日本17府県で、データの少ない地域の解消、過去のデータとの比較による経年変化、希少種の在来種のタンポポの分布状況や生態の把握なども狙いとして、タンポポ調査を実施した。 今回の「タンポポ調査西日本2020」は、当初の計画では2019年3~5月と2020年3~5月で実施して集約する予定であったが、2020年はコロナ禍のために十分な調査ができず、2021年春に調査活動を延長することとし、2022年3月までに、結果の解析を行って、報告書を作成する。
<内容> 西日本全体の事務局を大阪自然環境保全協会事務所に置くとともに、府県単位で実行委員会を組織した。ただし、講習会やデータ処理などが府県単位で困難な場合は、全体事務局あるいは近隣の府県の協力により実施することとした。 調査のベースになるのはタンポポの頭花(可能であれば痩果を含む)と調査票である。調査方法と調査票の記入のしかたなどを示した ①調査用紙(白黒A3二つ折)と、西日本調査ではけkンできるタンポポの種類の見分け方などを写真で示した ②調査用リーフレット(カラーA3二つ折)とを平成31(2019)年3月に用意した。これらをタンポポ調査に関心のある個人や団体にお送りして、市民調査としてのタンポポの分布と生育環境の調査を呼びかけた。 集まった頭花と調査票を元に、各府県実行委員会でサンプルの同定等の処理を行い、データ入力を行って、西日本事務局で集約し全体でとりまとめた。また、雑種のDNA解析については、大阪市立大学の植物生態学研究室において解析を進めることとした。 平成31(2019)年春には全体で27413点の頭花と調査用紙が送られてきて、順調にデータが収集されていた。しかしながら、令和2(2020)年春は、新型コロナウィルス蔓延の影響で、多人数での府県を超えた調査や講習会、同定会が行いにくい状況となった。しかし、タンポポ調査は基本的には野外において個人で実施するものであり、当初の予想以上にデータが集まり、31310点に達した。その後、高知・島根を除いて、令和3(2021)年春も続けて調査を行い、12053点のデータが集まり、現時点で合計70776点となる。2010年度調査に73251点には達していないが、2015年調査の61402点よりは多く、コロナ禍にも関わらず、調査を1年延期したこともあって、ほぼ前2回の調査に匹敵するデータ数となった。 現時点では結果の解析は終了できておらず、報告書に執筆中であるが、現状では以下の点を特記しておく。
- 在来種タンポポの分布状況が前回よりも詳細に明らかにすることができた。
- 2010年調査と、2015年調査の結果を比較すると、多くの府県で外来種タンポポの比率が増加傾向にある中、頭打ちとなった府県が増え、大阪府と兵庫県は減少傾向を示した。2020年調査では全体としても外来種タンポポの比率が減少し、多くの府県で頭打ちから減少に転じた。
- 外来種のセイヨウタンポポについて、DNA解析を行った結果、2010年には雑種の割合が55%で、2015年は59%とわずかに増加したが、今回2020年は74%まで急増した。一方、アカミタンポポの雑種比率は2010年の2.0%から、2015年3.2%、2020年6.3%と、セイヨウタンポポよりはかなり低いものの、増加傾向にあることが確認された。また、総苞外片が上向きで、花粉観察をしないと在来種と間違うおそれのあるセイヨウタンポポの雑種が年々増加している。一方、アカミタンポポでは増加傾向はみられなかった。
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