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花博自然環境助成事業

令和2年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) モンゴル森林再生促進研究会〔滋賀県〕
事業名 「倒木遮蔽更新」仮説を応用した再生促進技術の開発
事業の実施場所 モンゴル国フブスグル県フブスグル湖東南部の山火事跡森林再生困難地および琵琶湖博物館
事業の実施期間 2021年4月1日~2022年2月28日
事業の概要 降水量が少ないため、山火事後の再生が困難なモンゴル北部で、森林観察で着想を得た「倒木遮蔽更新」仮説を応用した森林再生促進技術の開発を行い、その成果を現地の人々に共有してもらうために研究調査、発表、技術研修、展示、論文化を行う。
成果の要約

モンゴル北部には山火事で広く焼けた後、年降水量が300mmと少ない上に、火事による環境変化(乾燥化)で、何十年も再生が困難なシベリアカラマツの火事跡が広がっている。目的はこのストップした再生をスタートさせるため、ここで発見した自然の更新様式を応用して、倒木のつくった陰に植林、種まきをし、広大な山火事跡地に、自然の力で再生をする元となる母樹を育てることである。
応用段階に入り、植林にも広げた、再生促進マニュアルを作成し、2019年度までに10haの再生促進マニュアルに従った播種・植林活動を行ってきた。前回は最上部に位置する、人手の入っていない山火事焼失木が林立している焼け跡北斜面の4.53haで再生マニュアルに従って、新たに30メートル毎、5列×270mの焼失立木を倒して、新たな陰を創り、そこに421本の苗木を植林し、その中間点に376カ所の種まきを行った。
2020年1月から徐々に進行してきた中国武漢発の新型コロナウイルスの世界的蔓延のため、2月以降、実質的に現地モンゴル国への渡航ができなくなったことから、渡航禁止実施期間の1年間の延長と実施時期の変更、計画内容のうち現地の仲間に指示依頼して、直接行かなくても出来ること(斜め板を活用した植栽・播種実験設定や再生促進マニュアルに従って倒木陰に行った植林・播種活動の活着調査)と、出来ないこと(現地での技術研修や講習、倒木陰の追加の照度の観測)に分け、できないことは行けた時に試みることに変更する変更案を出し、承認された。
2020年6月、コロナ禍が広がり、渡航ができなくなったため、現地の仲間に依頼、指示して、リモートで、2019年9月に行った焼け跡倒木北側の再生促進マニュアルに基づいた植樹の活着結果のデータを取ってもらい、食害を除いた植樹の活着率が昨年同様、9割まで上がるか調べた。また計画図を送って、倒木に代わる「斜め板」の有効性を確かめる野外実験をセットし、スタートしてもらった。

2021年7月になってもコロナが蔓延し、渡航できなかったので、1年前にスタートさせた、「斜め板」の有効性実験結果のデータ取り(倒木陰、斜め板陰、草地、にランダムに24本ずつ植林した苗木の活着調査、写真撮影、樹高の測定)を、現地の仲間に依頼し、リモートで試みた。
2020年6月にリモートで現地の仲間に依頼して行った再生促進マニュアルに従った倒木陰の植林の活着率は185本調査のうち、食害20本、枯れ11本で、食害(10.8%)を除いた分での枯れは6.7%で93.3%が活着していた。
これでこの方法での植林木の活着率は、3年、3回とも9割以上となった。
2020年6月にスタートさせた斜め板の有効性を確かめる実験の2021年7月の結果は植林に関して、倒木陰で24本中3本(食害2,枯れ1)が枯れ、斜め板陰で24本中4本(食害2、枯れ2)が枯れ、草地で24本中12本(食害6、枯れ6)が枯れた結果となり、1年目で、倒木陰で95.4%、斜め板陰で90.9%、草地で66.6%という活着率となった。この結果から、斜め板も倒木と近いシェルター効果があることが示され、倒木のない半乾燥地での森林再生にもこの方法を応用する道が開かれたと思う。

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