首都圏などでは新型コロナ感染症が懸念されましたが、実施場所が山梨県三つ峠山の山頂付近の自然の中ということで、大学生が参加して感動できる保護対象の希少種アツモリソウの開花時期である6月19・20日の週末に、1泊2日で開催することにしました。 今後プログラムを継続するとして第1回目でもあり、募集は当協会と関係の深い山梨県内の大学2校と東京都内の大学1校、静岡県の大学1校に募集を行い、それぞれの大学から応募者がありましたが、開催当日近くになり新型コロナ問題で移動規制が強化されたことで、参加できなくなったり、日帰り参加に変更になったりした学生もおり、少人数ではありましたが、無事開催できました。 指導者としては当協会の会長、本部長、理事2名と事務局1名が参加しました。会長は日本植物園協会会長で植物学者、本部長は三ッ峠山荘のオーナーで環境省希少野生動植物種保存推進員かつ山梨県希少野生動植物種保護専門員としてアツモリソウ自生地を中心とした山頂周辺の希少種を保護するボランティア団体三ッ峠ネットワークの代表です。そして、理事の一人は山梨県山岳連自然保護委員会委員長で、もう一人は静岡県立農林環境専門職大学准教授で南アルプス高山植物保護ボランティアネットワークの役員をしています。 今回の参加募集は、山梨県からは山梨県山岳連自然保護委員メンバーの山梨大学と山梨学院大学の各山岳部から、山梨大学の学生が日帰りで2名、それと静岡県立農林環境専門職大学から宿泊で1名、なお、昭和大学北岳診療部からは移動規制のため見送りとなりました。 時期が梅雨時ということもありときどき小雨の降る天候でしたが、1日目はアツモリソウ自生地の植生を観察し多様な生態系について学習してもらってから、登山道ロープの更新作業を実施しました。古い木製の杭やロープを取り外し、新しいプラスチック製の杭を打ち直し、使える鉄製ロープは再利用しました。二日目はアツモリソウ自生地の防鹿柵内の植生を改善するため、植生を単一化してしまう脅威植物の除伐作業を行いました。
11月になって非常事態も解除され、ニホンジカの防鹿柵飛び越え防止対策の嵩上げ工事を行うことになり、地元の都留文科大学に連絡をとり、本事業を追加実施することにしました。2名が宿泊参加することになり、一日目は嵩上げ工事に参加してもらい、二日目は登山道ロープの更新作業を行ってもらいました。花の時期は終わっていたので、一日目の夕食後に三つ峠山で咲く花の写真を紹介し、山頂周辺の植生と昆虫や菌類との共生関係、三ッ峠ネットワークの自然保護活動について学習してもらいました。 本事業の実施について、令和4年1月1日発行の会誌に掲載し、会員に報告しました。
参加してくれた山梨大学の男子学生二人には杭打ち作業を体験してもらいました。初めは慣れない手つきで作業していましたが、そのうちコツをつかんでからは作業も手馴れてきました。子どもの頃に自転車に乗るのを覚えた時の体験と同様、繰り返しやっているうちにコツを覚えてできるようになることを思い出したようです。また、このような作業を年配者から指導され、励まされながらやることで、世代を越えたコミュニケーションをとる良い機会になったようです。 静岡の専門職大学の女子学生は大学で林業を学んでいる関係もあり、翌日の植生改善作業もやってもらったことで、これまで野草のことには詳しくなかったものの、作業を続けているうちに植物を見分けられるようになるとともに、興味も持つようになったようです。二日間を通して体験したことの感想文を会誌に寄稿してくれました。 単純な作業でも繰り返しやり続けることで得られることのあることを理解してくれたものと思います。今回の実施を通して、自然保護活動のプログラムについて検討する機会が得られ、また今後の実施に際し、参加募集の働きかけがしやすくなったと思います。 大学生を対象とした事業でしたが、地域の保育園に事業内容を説明したところ、保護者にも参加していただきました。親子で登れる山なので、他の保護者とも相談して一緒に体験してみたいとおっしゃっていました。 都留文科大学の学生は、三つ峠山の麓の大学でもあり、今後も三ッ峠ネットワークの活動に参加して、植物調査や保護活動などをクラブ活動の一環として協力してもらうことについて話し合うことができました。 大学生だけでなく会員や地域の人たちの勉強会の機会を増やしていきたいと思います。
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