2015年、環境省より「生物多様性保全上重要な里地里山」に指定されていた久保川イーハトーブ世界にて、生物多様性と絶滅危惧種に指定されている希少種の域内保全を目的に、地域内に位置する荒廃地(耕作放棄地)をビオトープ化することを目的とする。(希少野生動植物を保全するためのため池と、動植物の人為的な導入を行わずに、どのように生物相が変化してゆくか定点調査する実験用ため池を造成。実験用ため池は、同じ面積で水深の異なるものを複数設ける。)また、敷地内の既存ため池における外来種(ウシガエル・コイ)の防除も行う。
(実施経過) 4月5日:ビオトープため池造成位置、面積、水深、等を専門家を交えて協議及び決定 4月12日:希少野生動植物保全用ため池の造成着工、外来植物除去は11月まで継続 4月19日:希少野生動植物保全用ため池、雨水排水 4月23日:希少野生動植物保全用ため池、最深部2mまで掘削完了 4月29日:希少野生動植物保全用ため池、完工、実験用ため池造成着工、植樹 5月7日:既存ため池、外来種防除用罠設置、11月まで継続 5月17日:実験用ため池の設計について、専門家を交えて協議及び決定 5月20日:希少野生動植物保全用ため、オオタヌキモ、ジュンサイの導入 5月27日:実験用ため池の造成完工 6月20~21日:希少野生動植物保全用ため池、ショウブ、オオアブラガヤ導入 6月27日:希少野生動植物保全用ため池、実験用ため池の生物相モニタリング調査 7月26日:希少野生動植物保全用ため池、実験用ため池の生物相モニタリング調査 希少野生動植物保全用ため池、ジュンサイ追加、水田雑草が自然発芽し成長 8月28日:希少野生動植物保全用ため池、実験用ため池の生物相モニタリング調査 9月6~7日:希少野生動植物保全用ため池、マコモ、導入 9月19日:希少野生動植物保全用ため池、実験用ため池の生物相モニタリング調査 10月6日~8日:希少野生動植物保全用ため池、アギナシ、イヌセンブリの導入
10月17日:希少野生動植物保全用ため池、実験用ため池の生物相モニタリング調査 11月23日:希少野生動植物保全用ため池、実験用ため池の生物相モニタリング調査 12月~2月予定の既存ため池かいぼり、事業報告発表会:コロナ禍のため延期
荒廃地(耕作放棄地)をビオトープ化し、自然公園として蘇らせることにより、市民団体が行う環境教育の場や、都市大学研究室の実習地、として利活用して頂くことができた。(大学実習はコロナ禍のため延期となりオンライン実習となった。そのため、自然公園は、オンライン実習に使用される動画の撮影地として利用された。)また、自然再生に関わる行政や法人の視察依頼も頂き、実行できた。このように、さまざまな団体が自然公園を利用することによって、口コミや地元紙、SNSなどを通じて地元地域の情報を広く社会へ発信。地域間交流を促進するとともに、生物多様性の保全や自然と共生することの重要性の普及啓発に繋がった。 生物多様性、在来種から構成される生態系保全の側面については、希少野生動植物の保全を目的に造成されたため池が早期に機能した。ため池造成完工前、5月20日の段階で、新しく造成された水辺には、ミズカマキリやオオコオイムシなどの水生昆虫類をはじめ、アマガエルのオタマジャクシなどの生息が確認された。その後は、定期的に希少種を含む水辺の植物を人為的に導入し、目的とするゲンゴロウ類など、大型水生昆虫が生息するために適した環境に少しでも早く近づけられるよう尽力した。植生の遷移を管理しつつ、水生昆虫の人為的な導入は来年度以降を計画している。動植物の導入を行っていない実験用ため池についても、地中で眠っていた水田雑草の種子が発芽、成長し、水辺の植生が復元された。5月から11月まで、ため池が凍結する前まで生物相のモニタリング調査を月に1回実施。夏から秋にかけて、保全用ため池と実験用ため池にてトンボ類の幼虫や小型のゲンゴロウ類の成虫を確認された。保全用ため池では絶滅危惧種に指定されているナミゲンゴロウも確認できた。ビオトープ、ため池は、造成された初年度の段階で、地域の生物多様性や在来種から構成される生態系の復元に貢献することができた。
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