スキップして本文へ

花博自然環境助成事業

令和4年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) 一般財団法人沖縄美ら島財団〔沖縄県〕
事業名 沖縄の伝統的景観木の新病虫害防除に関する調査研究
事業の実施場所 国営沖縄記念公園海洋博覧会地区、恩納村、名護市、沖縄県立博物館美術館、琉球大学農学部
事業の実施期間 今回計画 :令和4年4月~令和5年2月 (助成対象期間) (全体計画:令和3年4月~令和6年2月)
事業の概要 観光産業が盛んな沖縄にとって、沖縄らしい景観の形成に重要な役目を果たす緑化木の健全な育成は重要である。本事業は、特に沖縄県内で近年問題となっている外来ヨコバイによるアカギの葉枯れや、約20年前から原因不明のフクギの黄化衰退木について調査研究を行い、伝統的文化や風土と結びついた景観の保全を目指す。
成果の要約

フクギの黄化衰退については、これまで調査対象とされてこなかった、フクギの黄化衰退木に穿孔するキクイムシの生態について着目した。まず、フクギの健全木と黄化衰退木の発生消長を明らかにするため、2か所の調査地に、健全木と黄化衰退木に同じ長さ・幅の誘引用茎枝を同数同じ高さに設置して、そこに飛来し穿孔したキクイムシの飛来数や繁殖様式を調べた。

また、このキクイムシは葉の付け根(葉柄)にも穿孔するが、葉柄は乾燥しやすく劣化しやすいことから、葉柄への穿孔は一般的に、他の穿孔場所が見つけられなかった場合の避難場所と考えられている。落ち葉への利用頻度を把握することで、黄化衰退を防ぐ一助となるかもしれない。そこで、葉柄の利用頻度と葉柄内の繁殖様式を明らかにするため、リタートラップをフクギの健全木と黄化衰退木の樹冠下に2基ずつ設置して、リタートラップに入ったフクギの落ち葉を2週間に1回程度回収し、葉柄内のキクイムシの穿孔の有無等を調べた。

外来ヨコバイによるアカギの葉枯れについては、薬剤防除試験を実施した。散布用薬剤、樹幹注入剤、土壌粒剤各2種類の処理区と無処理区を設定して、各処理区の調査木を各区3本ずつ供試した。各薬剤処理前とそれ以降のほぼ2週間毎に、地上4m付近の小葉10枚を静かに採取した後に、葉上の本種成虫・幼虫を計数して、無処理区のそれと比較した。また、全調査木を対象に葉の状態を目視で観察し、薬害 (葉の奇形、褐変、枯死等)を記録した。

フクギの黄化衰退に穿孔するキクイムシについては、近縁種との共通点もある一方で、本キクイムシ特有の繁殖特性が見られるなど、新たな知見を得ることができた。これらのデータを整理し、次年度中の英文誌での投稿を目指す。

アカギに加害する外来ヨコバイの薬剤防除試験については、試験した6種類の薬剤のうち散布用薬剤2種類、樹幹注入剤1種類について、幼虫数が無処理区よりも少なかったことから、幼虫に対しての薬効を確認した。他の3種類については、効果についてもう少し検証が必要であるため、引き続き調査を行う予定である。また、全ての調査木で薬害は観察されなかったことから、薬剤による樹体への影響は低い可能性が示唆された。これらの成果の一部を、令和4年9月16日開催の令和4年度沖縄都市緑化月間 亜熱帯緑化事例発表会にて発表し、優秀賞を受賞することができた。

04-01-01.jpg 04-01-02.jpg