スキップして本文へ

花博自然環境助成事業

令和4年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) NPO法人生物多様性研究所あーすわーむ〔長野県〕
事業名 浅間山の草原・森林における動植物モニタリング調査
事業の実施場所 浅間山湯の平(長野県小諸市)、浅間山麓のつつじヶ原(長野県軽井沢町)
事業の実施期間 今回計画 :令和4年4月~令和5年2月 (助成対象期間) (全体計画:令和3年4月~令和6年3月)
事業の概要 浅間山では亜高山帯、偽高山帯に貴重な自然草原が存在するが、シカの採食圧や森林化、乾燥化等により、草原環境の維持が危ぶまれている。その草原の生物多様性の維持のために、生息する動植物のモニタリング調査を実施し、当該地の保全に向けての効果的な方法や対策について考察する。
成果の要約

<つつじヶ原>

1.方形区(刈り取り区と無処理区)における植生調査では、刈り取り区のみが刈り取り前と刈り取り後に年数が経つにつれ、その群集構造に変化が見られ、レッドリストに記載されているヤマトキソウや草原性植物のアヤメやオトギリソウも記録され始めたが、生物多様性の指標である多様度に有意な差はみられていない。また、刈り取りにより、シカやイノシシにとっては採食しやすい環境となっているようで、採食圧により草原性植物の回復が抑制されている可能性もある。

2.近年、植生の変化や安定性に大きな役割を果たすことがわかってきた菌根菌が、草原からアカマツへの植生遷移に応じて、どのように変化するか、土壌中の根のDNAにより菌根菌の種および種数を調べた。上記の方形区の刈り取り区と無処理区間では、差は見られなかった。しかし60mのライントランセクトで草原、低木林、森林の三段階に分けて調査したところ、遷移に伴って菌根菌の種数は減少し、菌根菌の群集構造も変化した。草原では菌根菌の多様性が高く、特に草原の指標種である菌根菌の種数が多かった。草原の維持や回復には菌根菌の多様性が重要であり、草原植生だけでなく菌根菌の多様性を含めて維持、回復が必要であると考えられた。一度、森林化してしまうと、刈払いだけでは菌根菌の再生回復は時間を要することが示唆された。

3. センサーカメラ調査では、シカが約半数撮影され、最も多かった。次いでイノシシが2割り程度撮影されていた。秋以降、看板周辺の刈払い地区を中心にイノシシの掘り返し跡が増え、中には3m四方ほどの広い面積もあった。カメラの撮影では、母親と4頭の子どもの母仔群だけでなく単独のイノシシも撮影されていた。方形区の刈払区でもシカやイノシシが侵入し、シカは採食していた。草原維持において、この2種の生息が影響を及ぼしている可能性が高い。

4. ドローンにより夏季のつつじヶ原の全景撮影を実施した。

5. 10月11,12日の刈払いには、それぞれ15名ずつ、のべ30名の参加があり、看板設置の刈払地区、方形区だけでなく、ライントランセクトの実験区周辺についても広く刈払いを実施することができた。

04-02-01.jpg 04-02-02.jpg