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花博自然環境助成事業

令和4年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) 島根県維管束植物誌編集委員会〔島根県〕
事業名 島根県維管束植物の調査〜植物誌の編纂に向けて
事業の実施場所 島根県立三瓶自然博物館
事業の実施期間 今回計画 :令和4年4月~令和5年2月 (助成対象期間) (全体計画:令和3年4月~令和6年3月)
事業の概要 島根県の自然が豊かと思われるが,その豊かな実態を把握する植物誌が未だに存在しておらず,植物多様性保全のため基礎データの構築は遅れている。本事業は島根県維管束植物誌の編纂・刊行のため,研究者,地元の植物愛好家,自然保護団体と協働で植物の調査,既存の十数万点標本データの分析,データベースの構築を行う。
成果の要約

(1) 標本などのデータの収集・構築

メッシュ図を充実させるために隠岐諸島や県西部などで現地調査を行い、分布確認 や標本収集を行った。 主な訪問先とそこで得られた成果は以下のとおりである。

•隠岐諸島(7/8-10):隠岐の島町では一般的な植物を多数採集して洞町での確実な分布標本を多数得るとともに、イガホオズキ、ヤナギイボタ、ウマノスズクサ、ナメル ギボウシなど貴重な植物の確認や、トリアシショウマやナガバハエドクソウなど分布の不明確な種の確定、樹高の高くなるエゾユズリハでないユズリハとしての生育の確認などができた。西ノ島町では貴重なオオエゾデンダやタクヒデンダの現伏確認などができた。

•隠岐諸島(10/8-9):西ノ島町の高崎山を踏査し、オニヒョウタンボクやユキザサ、コバノイラクサ、セリモドキなどの貴重な植物を確認した3 隠岐の島町の北谷周辺では、ナガバアカソやナツェビネなどの生育を確認した。また、同町原田の銚子ダム周 辺では長らく現存するか不明であったバリバリノキを再確認することができた。

・県西部(4/9):益田市匹見町道川、鹿足郡津和野町左鐙、津和野町笹山でイカリソウ属を対象とした調査を行った。これによりこれまで不明であった県西部における本 属の分布情報を得ることができた。本調査で得られた知見は、以下の報告として公表した。

柳浦正夫 (2023) 島根県西部のイカリソウ属 (Epimedium)の分布と形態の比較、島根県立三瓶自然館研究報告。

・県西部 (5/10、 5/29) :益田市美都町においてサルメンエピネの確認や撮影を、津和野町において再同定が必要とされるイヌスギナの標本採集を行った。

・県西部 (8/15-16) :県西部の海岸付近において海岸植物などの調査を行った。本県では分布が局限しているハマボウについて、従来、日本海側北限と考えられてきた萩市内の生育地を対象に、県内の生育地との比較のために確認を行った。

・県西部(9/11):益田市匹見町の亀井谷を調査し、ウラジロウコギ、メグスリノキ、ミヤマカラマツ、シコクスミレなど県内では希な種の生育情報が得られた。また島根県初記録となるマルバサンキライとみられる種も確認できた。

・県西部 (10/20-21):希少植物であるヒメバイカモの県内唯一の生育地である吉賀町で、 現地の保護団体とともに生育状況を確認した。

•その他、中海周辺(10/12、11/4)では県内では分布が知られていなかった植物の生育を確認するとともに、奥出雲町(5/17など)ではあらたに分類されたカンアオイ類などを確認した。

•これらの調査に際しては確認種の写真撮影を行っており、植物誌で活用できる写真を入手することができた。

隠岐諸島で採集した標本を中心に、標本データの入力やラベルの作成、台紙への貼付などの作業を行った。これにより新たな標本データを収集することができ、植物誌の基幹であるメッシュ図の充実を図ることができた

(2) 文献参考資料の収集・とりまとめ

1982 年発行の島根県大百科を調べたところ、サクラソウやヒメユリなど、同書に記載があるが、標本などの証拠がない種類が見つかり、今後重点的に調査を行う種類として抽出することができた。

3)植物誌原稿の作成

前述の現地調査の結果、新たにデータベース化した既存の標本データ、協力団体から提供のあった分布情報などをもとに、メッシュ図への情報追加、植物誌原稿の加筆などを行うことができた

(4)その他

以下の学会で植物誌編纂の状況について発表した。大学や研究機関などに対して、 植物誌編集に取り組んでいることを周知する良い機会となった。

柳浦正夫•井上雅仁・林蘇娼 (2022, 5) 島根県維管束植物誌の編纂に向けて.第 78回中国四国痘物学会大会 (島根・オンライン)

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