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花博自然環境助成事業

令和5年度助成事業 成果概要の報告

団体名(所在地) 一般財団法人沖縄美ら島財団〔沖縄県〕
事業名 沖縄の伝統的景観木の新病虫害防除に関する調査研究
事業の実施場所 沖縄県名護市、名護市屋我地島内、国頭村、沖縄市:海洋博公園 (沖縄県本部町)、琉球大学農学部、那覇新都心公園
事業の実施期間 令和5年4月〜令和6年2月 (アカギヒメヨコバイの薬剤防除試験) 令和5年4月~令和5年12月 (ソテツのカイガラムシの被害実態と薬剤防除)
事業の概要 観光産業が盛んな沖縄にとって、沖縄らしい景観の形成に重要な役目を果たす緑化木の健全な育成は重要である。本事業は、特に沖縄県内で近年問題となっている外来ヨコバイによるアカギの葉枯れや、約20年前から原因不明のフクギの黄化衰退木について調査研究を行い、伝統的文化や風土と結びついた景観の保全を目指す。
成果の要約

アカギヒメヨコバイと令和5年3月に沖縄県内で初確認されたソテツシロカイガラムシに対して、薬剤防除試験を実施した。アカギヒメヨコバイに対しては、散布用薬剤、樹幹注入剤、土壌粒剤各2種類の処理区と無処理区を、ソテツシロカイガラムシに対しては、散布用薬剤1種類の処理区と無処理区を設定して、各処理区の調査木を各区3本ずつ供試した。各薬剤処理前とそれ以降のほぼ2週間毎に、アカギヒメヨコバイについては、地上4m付近の小葉10枚を静かに採取し、ソテツシロカイガラムシについては、地上1.5m付近の小葉10枚を静かに採取し、その後に葉上のそれぞれの成虫・幼虫を計数して、無処理区のそれと比較した。また、全調査木を対象に葉の状態を目視で観察し、薬害 (葉の奇形、褐変、枯死等)を記録した。
アカギヒメヨコバイについては、温度による発育への影響を調べるために、異なる飼育温度下で幼虫及び成虫の室内飼育を行った。
フクギの葉と枝に穿孔するフクギノコキクイムシの繁殖生態について、第135回日本森林学会大会 (2024年3月 東京農業大学)で発表を行った。
アカギに加害するアカギヒメヨコバイの薬剤防除試験については、試験した6種類の薬剤のうち散布用薬剤2種類、樹幹注入剤1種類について、幼虫数が無処理区よりも少なかったことから、幼虫に対しての薬効を確認した。また、全ての調査木で薬害は観察されなかったことから、薬剤による樹体への影響は低い可能性が示唆された。
令和4年度に効果を確認した散布用薬剤アプロードフロアブルが、令和5年7月に適用拡大された。
アカギヒメヨコバイの幼虫および成虫の飼育試験の結果から、温度が高くなるとともに、発育日数が短くなることと、30℃以上の区では高温による発育抑制が見られたことを樹木医学会第28回大会 (2023年12月 琉球大学)で発表した。
国頭村をはじめ沖縄県内でソテツシロカイガラムシに対する散布用薬剤を用いた試験および薬剤防除を実施した。散布用薬剤を用いた試験については、特に幼虫に対する効果を確認した。本調査成果の一部を令和5年9月に令和5年度亜熱帯緑化事例発表会で発表し、審査員特別賞を受賞することができた。
次年度も引き続き、被害実態の把握と薬剤防除試験を実施し、効果が見られた薬剤については、適用拡大を目指す。

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