2023年については、4月~7月に定点調査(複数の地点から、無線機を利用して交信しながら、同時に個体の飛行やとまりを確認し、営巣場所を絞り込む)と踏査調査(定点調査や過去の営巣履歴に基づいて、森林内を踏査して使用中の巣を発見するとともに、繁殖進行状況や巣立ちヒナ数を記録する)を併用して、オオタカの繁殖状況を把握した。加えて、2024年についても、同年の繁殖兆候を把握するために2024年2月にも補足調査を行った。 その結果、2023年については、過去にオオタカが営巣した履歴のある営巣地27か所で調査を行い、11か所でオオタカの造巣を確認し、9巣で抱卵を確認した。また、その後繁殖状況をモニタリングし、9巣すべてでふ化を確認できたが、育雛中で3巣が失敗し、巣立った巣は6巣に留まった。巣立ち雛数は合計で14羽であった。繁殖成功率(巣立ち巣数/抱卵巣数)は67%、1巣あたりの巣立ち雛数は2.3羽であった。 2024年については、2023年に繁殖が確認できなかった営巣地6か所について、2024年の繁殖について兆候の有無を確認するために調査を行った。その結果、2か所についてはそれぞれオオタカの成鳥個体1羽を確認したが、造巣中の巣は確認できなかった。残りの4か所については個体の確認もできなかった。これら6か所については、2024年も繁殖を行わない可能性が高い。 上記2023年の調査結果に、2001年から2022年までのデータを加え、合計23年間の繁殖つがい数、繁殖成功率、1巣当たりの巣立ち雛をまとめ、那須野ケ原におけるオオタカの繁殖状況の変化を明らかにした。 今回の事業によって、2001年~2023年までの23年間の那須ケ原のオオタカの生息状況について、以下のことが明らかになった。 繁殖つがい数:この地域では、2001年から2004年までは15つがいが繁殖していた。このつがい数はこの23年間で最大であり、この後徐々に繁殖つがい数は減少し、2012年には8つがいまで減少する。この後、2020年までは繁殖つがい数は8から10つがいの間を変動しながらも安定していたが、その後下降に転じ2023年には6つがいと過去最低になった。 繁殖成功率:72%から87%と変動しながらも安定していたが、2012年には55%、2013年には50%と急激に低下した。その後2014年からは徐々に回復していくが2018年には再度60%まで落ち込む。しかし翌2019年には過去最高の94%まで上昇し、その後は低下するも現在では70%前後で推移した。 1巣当たりの巣立ち雛数:2.5羽から1.7羽まで変動はあるが、23年間を通じて2羽前後で安定している。近年(2020年以降)においても特に減少する傾向は見られなかった。 これらのことから、那須野ケ原のオオタカは、2001年~2023年までの23年間で生息つがい数は減少率60%と大幅に減少しており、1巣当たりの巣立ち雛数は2羽前後で安定しているものの、繁殖成功率も10%程度低下しており、全体として繁殖状況は大きく悪化していることが明らかになった。
|