日本と台湾の里山に関わる環境政策、地域振興政策、実際の地域活動を共有し比較することができた。 2000年代に「里山 」という概念・キーワードが台湾の研究者を通じて環境政策に取り入れられた。その研究者がシンポジウム登壇者の李光中東華大学教授であった。台湾の生態学と環境政策の連携の歴史と日台の里山交流史を知ることができた。 その応答として、森本幸裕京都大学名誉教授のウエピナーを開催し、日本の里山研究史と「自然共生サイト 」を推進する日本の環境政策をお伝えすることができ、台湾側の環境政策実務者にもいい刺激となり、今後もウェビナーで情報交換を継続しようという機運が高まった。 日本・台湾とも「昆明・モントリオール生物多様性枠組」30by30目標・OECMに関する。 指針が、環境政策を転換し大きく前進させた。生物多様性と地域の生活・生業を連携させ、民間・企業の参与を広げるという共通の課題を共有し、お互いの取り組みを情報交換する知的な基盤を築くことができた。 (報告冊了より、屏東科技大学陳美恵教授の講評) 「日本の専門家が環境づくりと子ども教育における里山体験、生態トレイルでの環境教育、山村活性化のための移住と文化交流の発展、幼い子どもたちへの森林教育、山村復興運動について共有しました。台湾に関しては、台湾里山イニシアティプと生物多様性政策、台湾コミュニティ林業と里山イニシアティプの事例、台湾里山イニシアティプ推進ネットワークの発展について解説しました。台湾と日本の交流は大変感動的でした。新型コロナウィルス感染症の影響で3年ぶりに相互訪問が再開され、故郷のために立ち上がって頑張る感動の交流は、台湾の里山で働く人々から大きな注目を集めました。」 (報告冊子より、日台里山交流会議会長中村伸之の講評) 「(日台の里山政策の比較)日本ではこのような政策を総合化してビッグピクチャーを描く行政機関、現場でのアクターとなって実践的研究をする研究機関が少ないように思われる。例えば国土面積の30%を保護区および自然共生サイトに認定すると いうことは、数字(量)だけでなく国土の構造(形)にかかわることである。2000 年代に策定された首都圏や近畿圏の「都市環境インフラのグランドデザイン」にリンクさせることでより具体化でき、都市・地域計画に組み込むことができると思うのであるが、担当が環境省と国土交通省に分かれているためか連携できていない。人口減少の局面で(都市が縮退し管理できない野生が山村を侵食する中で)道州制の単位で都市と自然の関係を総合的に再構成する時期に来たのではないか。台湾・国土グリーンネットワークの結節点にある農山村をコミュニティ林業で支援するなど、地域政策を戦略的に組み込み地元の担い手育成を行う体制も参考にしたい。」 「(台湾のコミュニティと地域生能系)小さな集落の中では土地や水源の有限性が目に見えて理解される。外部から資源や資材を無制限に持ち込むこともできない。土地利用の自在さと限界が裏腹にある。資源の量から人口も規定されるが。資源・エネルギーが生産量を規定することは生態学の基本原理で、それに従うことがコミュニティの規範となる。」
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